-秋の食材
(田舎家)
「米さえうまければ、わっば飯だって何だってうまくなる」とは、新潟いなかや名物「わっば飯」を考案した田舎家会長 吉沢喜一さん。料理人は味を知らねばならぬと、全国のうまいといわれるものは何でも食べてきた。その食の達人が日本一と太鼓判を押すのが新潟の魚と酒、そして米だ。 田舎家では魚沼市(旧北魚沼郡入広瀬村)でとれる魚沼こしひかりを使う。ほかの米とは、炊き上がったときの香り、つや、うまみが違うという。
そして、五分か一割多めに水を加え、少しやわらかめに炊く。 まさに「青田から飯になるまで水加減」のことわざどおり、この加減がうまい米の味をさらに引き立てる。うまい米が育まれるのは、朝日が差して王則中はぐっと気温が上がり、午後になると日がかげって急激に気温が下がる山の斜面。この寒暖差が一粒一粒にうまみを凝縮させる。そんな恵まれた大地が、新潟県内に点在している。神様から与えられ、先人が知恵と労力で選び、耕し、代々受け継いできた新潟の宝物だ。
宝の子どもたち「新米」が巣立ちゆく秋。「待ち遠しいねえ。毎年のことだがこれを食べると、新潟に生まれた幸せを感じるよ」。味の達人、吉沢会長も顔がほころぶ。
新米は、そのまま味わってももちろんうまい。塩とごはんがあれば、茶碗1杯は軽くいけそうだ。そして新潟の秋を代表する味覚をおかずにいただけば、2杯3杯・・・と食欲はとどまるところを知らない。
新潟では、農閑期である秋から冬に祝儀を行うことが多かったため、この時期に旬を迎える根菜を使った料理が発展してきたという。その代表が里芋やごぼうを使った「のっぺ」だ。当然、使う食材の質にもこだわり続けてきた。 京都から北前船で伝えられたという食用菊かきのもとも、忘れてはならない新潟の秋の味。葉物が少ないこの季節に、しゃきしゃきとした歯ごたえと鮮やかな紅色を楽しむこの一品が、食膳に彩りを添える。